2022.02.18
空間のレシピ No2

昨今の省エネ仕様建物で室内空気環境を考える。
省エネ法の厳格化により年々建築法基準が厳しくなり、300平米以上の建物には昨年4月から省エネ届出が義務づけられました。
300平米以下の住宅でも高機密高断熱性能が求められます。コロナ禍の時代、少々心配なのは省エネ仕様の高気密高断熱の室内空気環境の事。
高気密高断熱の空間では24時間換気が必要ですが、或るお宅では電気代節約のためその24時間換気を止めてある所があると聞きます。此れはとても怖い事です。
空気中には、一般的に埃やゴミが漂っていて当然乍ら湿気や脂分も空中に紛れ混んでいます。ウィルスやカビ菌も一緒。
実は高気密高断熱仕様の空間とは、一般家庭にある冷蔵庫のようなものです。
冷蔵庫の電源を抜いたまま2日も3日も放置すると、冷蔵庫の内部はカビだらけになるでしょう。
高気密高断熱仕様の空間も全く一緒。空気の流通しない環境では、ビニールクロスやウレタン塗装の綺麗なフローリングなど新建材の表面に、眼に見えないカビや汚れなど汚染物質が天井にも壁にも張り付き、生活空間が其れ等で覆われてしまっている可能性があります。その事はそのまま、呼吸器疾患やアトピーなど私達の健康を害する原因となります。
昔のように漆喰や天然木材の仕上げは、空中の湿気や埃などを吸着させる機能を有していましたが、この頃では手間の掛かる湿式仕上げや自然木材などは使用しないのが一般的。
冷暖房機器は、室内空気を回して熱交換するだけで空気そのものは浄化しません。
汚れたフィルターに付着したコロナウィルスやレジオネラ菌などが、空調機によって室内にばら撒かれた事例もあります。ダイヤモンドプリンセス号のコロナクラスター感染などは代表的な事例。
空間を計画する際には、新鮮空気の取入口と室内空気を排出する換気扇の位置関係で室内の空気の流れを計画します。此の空気の流れを計画する事が、コロナ禍を経験した此れからの時代には、人命に関わるとても大切な要件になりました。
私のオフィスで大きなガラス張り空間を計画する際にも、夏場は窓側の灼熱した空気が部屋の内部に行き渡らねよう、窓の上で換気を行い熱を即逃すように計画します。同様に外部から人が持込むなど何らかの理由で侵入したウィルスを室内の奥深くへと取り込まぬよう、室内のエアーバランスを調整する事が必須となりました。
空間を計画するには、室内の空気の流れも一緒に計画する事が必要。空間の見た目も大切ですがエアーバランス計画はそれ以上に大切です。

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